債務の消滅時効

 お金を借りて、返済を何らかの事情により停止した状態で数年経過している場合、消滅時効が成立していることがあります。

 民法改正前(令和2年3月31日以前)であれば、貸主か借主が商法上の商人であれば商事債権として5年、商人でないのであれば10年で時効となります。

 従って、取引履歴の最終取引日から5年以上経過していれば、債権の消滅時効が成立している可能性が高いといえます。

 民法改正後は、商法522条が削除され、債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年、権利を行使することができる時から10年間とされています。

 事例として、債務者が忘れた頃に急に督促状が送られてくることがあり、これに対してうっかり一部でも返済してしまうと時効中断(更新)となってしまうケースもあります。

また、過去に訴訟を起こされていた場合など消滅時効が中断して、判決確定から10年となってしまっていることがあります。判決により債務名義を取得されていれば、債務名義取得から10年は時効が完成していないということになるからです。

 消滅時効が成立していれば内容証明郵便にて時効の援用をします。その後は、貸金業者によりますが、原契約書を返還してもらうか合意書を作成します。それというのも、自然債務であるため完済をしたわけではないと、原契約書を返還しないという業者もありますので合意書を交わします。

 ところで、中には債権者から債権譲渡を受けたとして督促状を送ってくる業者もあります。これも無登録業者のこともあります。

 債権譲渡があってもそれ自体は時効中断事由ではありませんので、最終取引日から5年が経過していることもあります。

 また、なかには自宅に取立てに来られたという方もいらっしゃいます。貸金業登録業者の取立方法は貸金業法21条、信販会社は経済産業省通達により取立方法の規制がなされており、受任通知によって取立行為に対処する必要があります。

 最高裁令和2年12月15日判決では、同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合において、借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく一部弁済をしたときどうなるのか判示されました。

 最高裁は、当該弁済は、特段の事情のない限り、上記各元本債務の承認として消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当であると判断されています。