在日韓国人の方が亡くなられて相続が発生した場合,相続人の範囲や法定相続分については韓国民法に従います。
これは法の適用に関する通則法36条によって,相続は「被相続人の本国法」によると規定されているからです。
相続については,日本と同じく被相続人のプラスの財産のみならず負債についても包括的に承継します(韓国民法1005条)。
熟慮期間は,相続人が相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に単純承認若しくは限定承認又は放棄をすることができるとあり,その期間は,利害関係人又は検事の請求によって,家庭裁判所がこれを延長することができるとあります(韓国民法1019条1項)。
日本の相続放棄では,相続人が自己のために相続の開始があったことを知って3カ月経過後でも,その後に例外的に相当な理由として予想外の債務が判明した場合に相続放棄の申述が受理される可能性があります。
しかしながら,韓国においては,韓国大法院にて相続債務の存在を知らなければ考慮期間が進行しないというものではないと判示されています。
もし,債務の存在を知らず重大な過失なく単純承認したとしますと,限定承認の方法を検討するという手続きになります(韓国民法1019条3項)。
注意すべき点としましては,日本と異なり相続人である子が全員相続放棄をしたとしますと,孫が第1順位の本位相続人となるため,孫についても相続放棄を検討する必要も出てきます。また、被相続人が日本以外に遺産がある場合、例えば韓国に遺産があればそちらでも相続放棄をする必要があります。
韓国においても日本と同様に戸籍制度がありましたが、平成20年より家族関係登録簿に移記されています。韓国より家族関係証明書や基本証明書,戸籍など取り寄せている間に,熟慮期間が経過しないかどうかも注意しながら手続きを進めていかなければなりません。