内縁の相続

内縁というのは,法律的には婚姻意思をもって夫婦共同生活を送っており,婚姻の届出の手続きをしていないために法律上の夫婦とは認められない関係をいいます。
ところで,同棲の場合はというと,一つ屋根の下に暮らしている関係であって,内縁関係にまではいっていない状態です。同棲と内縁との違いというと,内縁関係は社会的にも夫婦として認められているという点です。
そして,内縁をしている事実婚の夫婦は,相手方が亡くなったとしても相続権はないとされます。ただし,事実婚関係であっても法律上の配偶者と同様の保護が図られているものもあります。

借地借家法による賃借権の承継
内縁の場合,相続権がないため,もし賃借人である内縁の夫が亡くなったとした場合,残された配偶者はどうなるかという問題があります。
もし賃借権を相続した相続人から建物を明け渡すように言われたとしたら,相続人の明渡請求は権利の濫用として許されないと最高裁によって判示されています。同じように大家から明渡請求された時は,相続人の賃借権を援用して明渡請求を拒否するということができます。
そして,もし内縁の者に相続人がいなければ,内縁配偶者は賃借人の権利義務を承継するとされています。

簡易保険制度による受取人
簡易生命保険契約において,終身保険,定期保険,養老保険,財形貯蓄保険の保険契約では,保険金受取人が指定されていないときに被保険者が死亡したことによって保険金が支払われる場合,内縁配偶者は他の相続人に先立って保険金の受取人となります。

公的年金制度による地位
内縁配偶者であっても遺族年金の請求ができるとされており,例えば厚生年金保険法では遺族厚生年金を受けることができる遺族というのは,被保険者等の配偶者であって,被保険者等の死亡当時,生計を維持していたものと規定されています。この場合の配偶者には事実婚関係にある者も含まれるとされています。ただし,受給要件を満たす必要があります。

縁故者制度による内縁
相続人やその代襲者もいない場合,相続財産は法人となり,相続財産管理人が相続財産の管理及び清算を行います。
もし,相続人の不存在が確定した場合,内縁配偶者は相続人の捜索のための公告期間満了時から3カ月以内に,家庭裁判所に対し,相続財産の分与を請求することができます。