相続の対象となるもの

 相続の際には,土地や預貯金,株式といったプラスの財産だけでなく,借金などの債務がもし残っていればその負債を相続するということになります。

 ただし、一身専属権については相続されません。例えば、亡くなった方名義の年金を受け取る権利や生活保護を受ける権利です。

(1)相続財産とは

亡くなった方の財産的な権利義務を相続財産といいます。

  • プラスの財産

不動産(土地,建物,山林,農地など),不動産上の権利(借地権,地上権などアパートを借りていた人が亡くなれば借家権も相続),現金や預貯金,有価証券や動産(車,家財,骨とう品や宝石など)。

  • マイナスの財産

借入金,買掛金,未払いの税金,保証債務などの債務

 もし、相続するのが負債ばかりですと、ゆっくりしてられません。相続開始を知ってから3カ月過ぎますと単純承認といって相続放棄ができなくなります。この相続の開始を知ってというのは、①被相続人の死亡の事実、②自分が相続人であることを知ったとき

  • 相続財産にならないもの

墓地,霊廟(れいびょう:先祖などの霊を祭った宮),仏壇,仏具,神具など祭祀財産(祖先をまつるためのお墓や仏壇。被相続人が指定していれば、特定の人に受け継がれます。指定がなければ慣習によります。)

  • 相続されないもの

 使用貸借の借主の地位、委任者・受任者の地位、身元保証による債務、公営住宅の使用権など

この他に相続財産でなくとも相続税法上は「みなし相続財産」として課税の対象となるものもあります。

・みなし相続財産

 相続や遺贈により取得した遺産以外に、相続や遺贈で取得したのと同じ経済効果があると認められるものは相続税法上、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。

みなし相続財産としては、死亡保険金、死亡退職金、生命保険契約に関する権利、定期金に関する権利などがあります。

相続対策として生前贈与

 遺言で一人の相続人へ財産を移転したとしても、他の相続人から遺留分減殺請求をされる可能性はあります。それならば、生前に親から子へ財産を贈与しておくというのも一つの相続対策となります。ただし、この場合、贈与税が関わってきたり、特別受益も関わってきますのでその点も加味して検討しなければなりません。

贈与税の計算をする場合、課税価格の計算は贈与された財産の価額を1月1日から12月31日までで合計し、基礎控除110万円を引いて、残りの金額に税率を乗じて計算します。申告については翌年の2月1日から3月15日です。

 贈与税率は、一般贈与財産と特例贈与財産とで異なり、特例贈与財産の税率は直系尊属から、その年の1月1日時点で20歳以上の子や孫などへの贈与の場合に使用します。

 一般贈与財産では、例えば直系尊属以外の親族や他人から贈与を受けたり、直系尊属から未成年の子や孫への贈与などに使用される税率です。

 特例贈与財産による税率で適用を受ける場合、戸籍謄本など一定の書類が申告の際に必要になってきます。

 なお、2019年7月1日より遺留分制度の見直しが行われ、遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分を侵害された額に相当する金銭の請求をすることができるようになります。

口座名義人が亡くなった時

 亡くなった方が,銀行や信用金庫などの金融機関で口座を所持していた場合,所定の相続手続きを行う必要があります。この手続きは相続人やその代理人,遺言執行者などが手続きを行っていきます。

 なお,従来は,預貯金は相続の開始と同時に各共同相続人が相続分に応じて相続するとされていましたが,最高裁判所の判例変更により遺産分割の対象になるとされました。

 はじめに,亡くなったという事実を金融機関に連絡しますと,口座は凍結されて入出金はできなくなります。これは,金融機関にとっては誰が相続人であるか分からず,誰に支払っていいか確定するまで被相続人の財産を保全するために行われます。

そのため,口座が凍結されてから,預貯金の払戻しができるようにするには金融機関で相続の手続きを行う必要があります。

 まず,口座にある預金を相続する場合,残高を確認する必要がありますが,預貯金通帳を紛失されている場合もあります。この場合,残高証明を開示するのであれば,相続人の一人から行うことができます。残高を把握することで,どの口座にいくらあるのかが判明し,もし遺言がなければ遺産分割協議を相続人間で行います。

 遺言がある場合は,公正証書遺言以外の場合は検認が必要となりますので,家庭裁判所にて遺言の検認を申し立てます。

 そして,口座の相続手続きを行う際には,各金融機関によって所定の書類を準備します。金融機関によって必要な書類があり,例えば戸籍謄本等や印鑑証明書などを準備します。金融機関によっては印鑑証明書など有効期限が決められているものがあります。

 そして,相続確認表,相続届や相続による名義変更届といった各金融機関所定の書類に署名,押印を行って印鑑証明書など添付します。

 用意する書類は,金融機関や遺言の有無によって異なりますが,一般的には被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本,相続人全員の戸籍謄本,印鑑証明書や遺産分割協議書などが必要となってきます。また,通帳があるのであれば,その故人の通帳を提出します。 Accent 3;\l