夫婦間での寄与分

夫婦間の財産制は以下の通りとなります。

夫婦は、婚姻の届出前にお互いで財産に関する契約をしなければ民法の規定によって夫婦財産制に従うことになります。

婚姻費用の分担

 夫婦は、その資産や収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用(医療費、生活費など)を分担します。

日常家事債務の連帯責任

 夫婦は、もう片方の相手方が日常の家事に関して第三者と取引をし、債務を負担したとき、夫婦のもう一方はその債務について責任を負うとされています。

ですから、例えば妻がクレジットカードで買い物をした代金の支払債務は夫も負うということです。

夫婦別産制の原則

 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その者の固有の財産となります。夫の収入を妻が自己名義で貯金しても、それは夫固有の財産となります。

 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有であるものと推定されます。ですから、どちらが取得した財産かはっきりしないものは夫婦二人のものと推定されます。

では夫婦間では相続の際、寄与分は認められるのでしょうか。

寄与分について

 寄与分とは共同相続人の中に相続財産の維持や増加に特別の寄与(貢献)をした者がいる場合、その貢献に応じた金額が相続分に上乗せされることで衡平を保つ制度です。

 共同相続人とありますが、民法改正により共同相続人以外の被相続人の親族についても特別寄与料が請求できるようになりました。

 寄与分が認められるには、共同相続人であること、被相続人の財産の維持や増加に貢献したということ、特別の寄与であるということが必要となります。

 そのため、夫婦間では協力扶助義務があるため、特別の寄与はなかなか認められないということになります。そもそも夫婦間では法定相続分が大きいという点があり、寄与分を主張しなくても相続分が多くなっています。

寄与分を認めるかどうか、それは相続人の遺産分割協議でまず決めることになります。話し合いがまとまらなければ、遺産分割調停の申立てにて進めていくこともできます。

相続登記の必要性

 土地や建物の所有者が死亡した場合,相続による名義変更として、所有権保存や所有権移転の登記をします。この登記はいつまでにしなければならないといった期限はありません。しかし,相続登記をしないまま放置していますとさらに相続が発生した場合などに後々,手続に支障が出てきます。

 不動産の手続きでいいますと,お亡くなりになられた方の名義のままにしておきますと,相続人にさらに相続が開始してしまうという数次相続が発生してしまいます。そうなると,いざ遺産分割協議をする際には顔も見たことのない人と協議をすることになり,遺産分割協議がまとまらず,結果として相続登記をすることが難しくなるといったことになってしまいます。

 そして,いざその不動産を売却しようとなっても,相続登記が済むまで手続が進まず,その結果,売却のタイミングを逃してしまうということにもなりかねません。

 このように,相続登記をせずにそのままにしておきますと,数次相続の発生や相続人間のトラブルにより,遺産分割協議自体が困難となってしまいますので,手続きをできるときに相続登記を申請しておくことが望まれます。

 以上のように相続登記をしていないということが所有者不明土地の増加の一要因でもあり、所有者不明土地の解消に向けて、遺産分割協議の期間を制限したり、相続登記の義務化が法制審議会にて検討されています。

相続の対象となるもの

 相続の際には,土地や預貯金,株式といったプラスの財産だけでなく,借金などの債務がもし残っていればその負債を相続するということになります。

 ただし、一身専属権については相続されません。例えば、亡くなった方名義の年金を受け取る権利や生活保護を受ける権利です。

(1)相続財産とは

亡くなった方の財産的な権利義務を相続財産といいます。

  • プラスの財産

不動産(土地,建物,山林,農地など),不動産上の権利(借地権,地上権などアパートを借りていた人が亡くなれば借家権も相続),現金や預貯金,有価証券や動産(車,家財,骨とう品や宝石など)。

  • マイナスの財産

借入金,買掛金,未払いの税金,保証債務などの債務

 もし、相続するのが負債ばかりですと、ゆっくりしてられません。相続開始を知ってから3カ月過ぎますと単純承認といって相続放棄ができなくなります。この相続の開始を知ってというのは、①被相続人の死亡の事実、②自分が相続人であることを知ったとき

  • 相続財産にならないもの

墓地,霊廟(れいびょう:先祖などの霊を祭った宮),仏壇,仏具,神具など祭祀財産(祖先をまつるためのお墓や仏壇。被相続人が指定していれば、特定の人に受け継がれます。指定がなければ慣習によります。)

  • 相続されないもの

 使用貸借の借主の地位、委任者・受任者の地位、身元保証による債務、公営住宅の使用権など

この他に相続財産でなくとも相続税法上は「みなし相続財産」として課税の対象となるものもあります。

・みなし相続財産

 相続や遺贈により取得した遺産以外に、相続や遺贈で取得したのと同じ経済効果があると認められるものは相続税法上、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。

みなし相続財産としては、死亡保険金、死亡退職金、生命保険契約に関する権利、定期金に関する権利などがあります。