離婚時の財産分与による登記

 離婚の財産上の効果として、民法上は財産分与請求権が規定されています。財産分与とは、婚姻期間中に築いた財産を分けるという制度です。

 財産分与請求権には、財産関係の清算、離婚に伴う損害の賠償、離婚後の配偶者に対する扶養として行われます。

 離婚の当事者の一方は相手方に対して、財産分与を請求できますが、除斥期間があるため、離婚時から2年以内に請求しなければなりません。

 また、婚姻前からあった財産や、婚姻後に相続した財産は夫婦が築いた財産ではないため、原則は財産分与の対象とはなりません。

 なお、財産分与によって不動産の名義を変えるには、所有権移転登記手続きによって行います。

 土地と建物の名義変更をする場合、必要書類としましては以下のとおりです。

財産分与の登記で使用する書類

1 権利証
2 印鑑証明書(作成後3カ月以内のもの) 1通
3 住民票 1通
4 固定資産評価証明書 1通

 以上が必要です。他に委任状や登記原因証明情報など押印書類が必要となります。

 実費として登録免許税が、固定資産評価額の1000分の20で算出した額が必要となります。

 仮に、不動産がまだ住宅ローンの返済中である場合、抵当権者である銀行は、住宅の名義変更について返済の期限の利益喪失事由とする定めを置いていることがあります。

 その定めがある場合、住宅を財産分与で配偶者に譲渡して所有権移転登記を行い、ローンの返済を継続していくには事前に銀行の承諾を得る必要がありますが、一般的には承諾を得られないことが多いとされます。

 そのため、住宅の所有者である夫から妻への所有権移転登記は住宅ローン完済後に行うこととして、所有権移転仮登記を行っておくことが考えられます。

年金分割制度

離婚に関する制度に、年金分割制度があります。
離婚時に夫の年金の一部を妻が受給できる制度ですが、条件があり、婚姻期間中の厚生年金記録があること、請求期限2年以内であること、当事者の合意または裁判手続きにより按分割合を決めたことなどが必要です。

税制面で関係するものとしては以下のとおりです。

財産を渡す方
財産分与した際の時価が購入時に比較して高い場合に支払わなければいけない可能性があります。
なお、居住用不動産であれば要件に該当すれば3000万円特別控除の制度があります。

財産をもらう方
不動産の場合、不動産取得税、登録免許税、固定資産税や都市計画税が関わってきます。
もし、もらった財産が相場に比較して多過ぎる場合や全ての事情を考慮しても多過ぎると判断されますと、贈与税がかかってくる可能性があります。

また、不動産取得税は財産分与が財産の清算を目的とされると課税されない場合があります。居住用不動産の場合、不動産取得税の軽減措置があります。

駐車場の契約

 建物に関係なく駐車場だけの賃貸借契約は借地借家法の適用はありません。借地借家法は建物所有を目的とするもので借地人の保護が図られています。

 また、管理事務所などを置いたとしても、当該建物は従たる設備に過ぎませんので借地借家法は適用されません。ただし、店舗とこれに要する駐車場を共に借地としますと、一体として使用されていると認められ借地借家法が適用されるという点に注意が必要です。

 そして、借地借家法が適用されないとなりますと、駐車場賃貸借の賃借人は基本的に弱い立場となります。

 なぜなら、借地借家法が適用されないため、解約申入れに正当事由は必要なく、賃貸人は契約の内容や民法の規定に従って解約申入れを行うことができます。

 また、短い期間の契約期間とした場合、借地借家法では一般の借地で30年より短い期間にできないのに対して、民法上の賃貸借では制限がないため、借主にとっては不利となります。

 民法上の賃貸借によるため、契約によって3カ月前の予告をもって解約できるといった途中解約の特約を定めているケースが多いです。

 なお、都市計画区域内で500㎡以上の規模により駐車料金を徴収する場合、都道府県知事へ届出が必要になります。

 賃貸借契約というのは、貸す人と借りる人との約束によって成立します。そして、建物所有を目的としますとかなりのお金をかけるため、5年や10年で終わりというのは不合理であり借りる人を保護するため借地借家法という法律で規制されています。

訪問販売によるトラブル

 高齢者の消費者トラブルでは訪問販売による被害も多いとされています。

 訪問販売とは、「営業所、代理店その他の経済産業省令で定める場所以外の場所で行われる取引」と「特定顧客」との取引をいいます。

 店舗以外の場所での販売で、自宅への訪問や押し売りがあり、また「特定顧客」に該当すれば訪問販売に該当します。特定顧客との取引とは、販売目的を隠して近づいてきて別の場所へ案内し契約させるパターンです。キャッチセールスやアポイントメントセールスがあります。

 かつては、訪問販売や通信販売、電話勧誘販売では商品、役務、権利は政令で指定したものに限られていましたが、現在では訪問販売において全ての商品、役務が規制対象となるのが原則です。

 ただし、「権利」については、訪問販売の対象になるのは「特定権利」に限定されます。

 保養施設、スポーツ施設を利用する会員権や映画、演劇など鑑賞する権利(チケット)などや社債その他の金銭債権、株式などが挙げられます。

 訪問販売によりトラブルに巻き込まれたとしてもクーリングオフを行使することで申込みの撤回または契約の解除をすることが可能です。

 訪問販売の場合、クーリングオフすることができる期間は、申込書面や契約書面といった法定書面を受け取って8日間ですので、法定書面の交付がなければ起算日が開始しないこととなります。

 また、法定書面が交付されたとしても、その内容を確認してみると販売業者の氏名が記載されていなかったり、商品名の記載が無かったりなど不備が見つかることがあります。

 法定書面の記載事項に不備があれば、クーリングオフの起算日が開始しないので、8日が経過していたとしてもクーリングオフの可能な場合がありますのでよく確認してみることが必要です。

 特定商取引法では、訪問販売、電話勧誘販売により通常必要とされる分量を著しく超える商品の購入をした場合、売買契約を解除できると定められています。

 これは過量販売解除権といいクーリングオフの行使期間が経過していたとしても契約締結日から1年以内に契約の解除ができます。

 事業者が過量であることを認識していたことが必要ですが、1回の取引で過量になる場合は主観的要件は不要です。