所有者不明土地・建物管理制度は,管理不全の土地・建物管理制度とともに所有者が不明あるいはその所在が不明な不動産であったり,適切に管理されていない不動産の発生を予防するとともにこれらの土地・建物の利用を促進する目的で制度が創設されました。
従来の財産管理制度では、人単位で財産全般を管理する必要があったため、土地が共有で複数名の共有者について所有者が不明となっていれば,その不明者毎に不在者財産管理人や相続財産清算人を選任するとなると費用も高額となり,手続きが躊躇われる結果につながってしまうこともありました。
ところが,新しい財産管理制度である所有者不明土地管理制度では人単体ではなく,その不動産全体を対象として管理を行う制度となっています。現在の所有者不明問題への大きな解決の糸口となり,利害関係人が地方裁判所に申し立てることで管理人を選任してもらうことができます。
管理人には対象となった不動産の管理権限が与えられますが、不動産のみならず動産にも権限は及びます。
この所有者不明土地管理人は,対象の不動産を管理することはもちろん,裁判所の許可を得れば,所有者不明土地を売却したり、建物であれば取り壊すなどの処分権限が与えられています。
また,管理不全土地・建物管理制度は,所有者による管理が不全であるために衛生上の問題や他人の権利を侵害するような物理的問題がある場合に利害関係人から地方裁判所に申立てることで,管理人を選任してもらうという制度です。
管理人による管理の対象となる財産は、管理不全土地(建物)のほか、土地(建物)にある所有者の動産や管理人が得た金銭等にも及びますが、その他の財産には及びません。
こちらの制度では,所有者の所在も判明しているため,売却などの処分を行うには所有者の同意が必要となります。
相続登記の義務化や相続土地国庫帰属制度が所有者不明土地の発生を防止するための制度であるのに対し、所有者不明土地管理制度は現状が所有者不明となっている不動産への対策といえます。