取消訴訟とは、行政庁の違法な処分や裁決の取消しを求める訴えをいいます。取消訴訟には処分の取消訴訟と裁決の取消訴訟とがあり、前者は行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消を求める訴訟で、後者は審査請求、異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為の取消しを求める訴訟です。
処分、裁決ともに公定力により、たとえ違法であったとしても、取り消しがなされるまで公定力により有効とされ、拘束力を持ちます。
そのため、違法な処分や裁決を放っておくと強制執行をかけられたりしてしまうということになります。
この効力を失わせるには行政庁が自ら取り消すか、取消訴訟を行う必要があります。
取消訴訟には処分の取消しの訴えと裁決の取消しの訴えの二つがあります。
そして、行政行為の違法性を争う方法としては、行政不服申立てと行政事件訴訟の二つがあります。
この場合、行政不服申立てでの審査請求の申立てもできますし、審査請求をせずに処分の取消訴訟を起こしてもよいとされ、これを自由選択主義といいます。
ただし、例外として個別の規定に審査請求に対する裁決を経た後でなければ、処分の取消訴訟が提起できないとあれば、審査請求を先に行い、その後に取消訴訟を提起します。これを審査請求前置主義といいます。
行政庁の処分に対して、不服のある者が審査請求をして、その請求を棄却する裁決がなされると、原処分の違法を理由として訴えを提起するには、原処分の取消訴訟を提起すべきか、裁決の取消訴訟を提起すべきかが問題となります。
この場合は、原処分の違法を主張するのであれば、処分の取消訴訟を提起すべきとされ、原処分主義といわれています。
行政事件訴訟法10条2項において、処分取消訴訟とその処分についての審査請求を棄却した裁決取消訴訟とを提起できる場合、裁決取消訴訟において、原処分の違法を理由として取消しを求めることはできないとしています。
処分の違法を争うのであれば処分の取消訴訟を提起し、裁決の違法を主張するのであれば、裁決の取消訴訟を提起しなさいということです。つまり、処分の違法を争うのに裁決の取消訴訟は行いないということです。
処分を取り消すなら、処分の取消訴訟をします。(裁決の取消訴訟はできない。)
裁決を取り消すなら、裁決の取消訴訟をします。(処分の取消訴訟はできない。)
これに対して、例外としての裁決主義では、処分の違法を争う場合と裁決の違法を争う場合の両者とも裁決の取消訴訟で行うことができるとされています。