成年後見制度の流れ

成年後見制度はどういった場合に申立てがされるかというと,判断能力が不十分な人が介護施設に入所したり,施設と契約したりするには本人がするには困難であるため,法定代理人が必要となるケースです。その場合,申立てをして成年後見人が選任されます。
他に申立てがされる理由としては,預貯金の払戻しや遺産分割協議などもあります。
成年後見開始の申立てができる人は,本人・配偶者・4親等内の親族や市町村長,検察官や未成年後見人,保佐人などです。
4親等内の親族とは,配偶者や4親等内の血族,3親等内の姻族をいいます。姻族というのは婚姻関係によって生じた親族のことをいいます。
そして,本人は,自分自身が後見による援助を望んでいる場合に自ら申立てをします。未成年後見人は,未成年後見の終了と成年後見開始の間隔が空かないように申立てをします。
申立てをするのは,本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。もし,施設に入所していれば,住民票上の住所と異なっている場合もあり,その場合には家庭裁判所の管轄も異なるケースもあるため,あらかじめ確認が必要です。
申立てをするには,申立書を作成して家庭裁判所に提出する必要があります。
なお,成年後見開始の申立てをして,途中で気が変わり,申立てを取り下げようとしても本人の保護を重点に置いているため,家庭裁判所の許可が無ければ取り下げることができません。
申立てが受理されますと,約1カ月以内の間に家庭裁判所から申立人に対して意見を聞きたい旨の通知がなされます。申立人は指定された期日に家庭裁判所へ行き,家庭裁判所調査官や参与員などと面接をして調査・審問が行われます。
審判がなされた後,申立人,本人及び後見人それぞれに対して,審判書謄本が送達されます。それから,即時抗告の機会が与えられ,家庭裁判所に対して不服があるならば2週間以内に即時抗告を行います。2週間が経過すると後見等開始の審判が確定します。
審判が確定しますと,家庭裁判所は,東京法務局に対して後見登記の嘱託を行います。その後,家庭裁判所から登記番号が通知されますので,法務局にて登記事項証明書を取得します。この登記事項証明書が今後の後見事務に必要となってきます。
後見人に就任しましたら,1カ月以内に財産目録を作成して家庭裁判所に報告を行います。その後も家庭裁判所に対して,定期報告を行っていきます。
この財産目録の作成には,後見監督人がいるのであれば,その立会いが必要になります(民法853条)。
財産目録を作成するまでは,本人と後見人の財産が混同することを防ぐため,財産の処分などの権限は認められません。ただし,急迫の必要がある場合には,必要最小限の行為のみすることが可能です(民法854条)。できるだけ早く財産目録を作成することが求められます。
報告書には,本人の生活状況や健康状態,財産の状況,収支予定等について報告を行っていきます。
一般的には,後見事務報告書,財産目録,収支状況報告書,収支予定表,預貯金通帳の写しなども一緒に提出します。
就任直後には,財産調査,目録作成,家庭裁判所へ第1回目の報告書提出を行っていきます。就任中には,財産管理,身上監護に関する事務,家庭裁判所への報告を行っていくようになります。
後見人の職務には財産管理と身上監護があり,財産管理というのは,主に預金通帳の保管,預金の入出金の管理,不動産の管理などを行います。財産管理では本人の財産と後見人の財産が混同しないように注意する必要があります。もし,多額の預貯金があれば,後見制度支援信託という制度の利用も検討されます。
後見人として財産管理を行うには,被後見人の預金通帳などの引渡しを受けておくことも必要となります。施設や親族が預金通帳を管理していることもあり,その場合,引渡しを受けることになります。
他にも印鑑や年金証書など重要なものがありますので,引渡しにあたり,引渡確認書を作成して,授受を行います。
そして、金融機関に成年後見人に就任した旨の届出を行います。この届出をすることで,成年後見人以外の親族は預金の引出などを行うことができなくなりますが,それによって使い込みを防ぐことも可能になります。複数の金融機関に口座があるかもしれませんので,地元の各金融機関に問い合わせをしていきます。
必要費としては,食費,医療費,介護サービス費,各種保険料や日用生活用品費などがありますし,各種保険料の支払いといった定期的に支払うものは口座振替にしておけば支払い忘れを防げます。また,口座振替を利用していれば,支払いの状況が預貯金通帳に記載されますので,支出の管理がしやすくなります。領収書などはノートに貼り付けて期間ごとにまとめておきます。もし,不動産の処分など重要な財産に関する法律行為を行うには家庭裁判所の許可を要します。
次に、身上監護とは,病院と入院や治療等の手続きをすること,健康診断等の受診契約手続き,障がい者手帳の交付手続き,施設等の入退所に関する手続き,介護サービスの契約を含めた手続きをして本人を支援します。また,訪問などにより本人に異変がないかの見守りなどを行います。
本人と面会に行くのに必要な交通費は,後見事務費として認められていますが,電車やバスといった公共交通機関を使うようにしましょう。もし,車を使ってのガソリン代を計上するのであれば,家庭裁判所とも相談しておくべきとされています。
本人が死亡するか,判断能力が回復して本人の支援の必要性が無くなれば,後見審判の取消しがなされ,後見も終了します。
後見が終了すると,成年後見人は,管理の計算,財産の引渡し,家庭裁判所への報告を行っていきます。その後は,東京法務局に対して後見終了の登記を行います。死亡したのであれば,2カ月以内に財産目録を作成して管理の計算をし,相続人へ通知をします。
後見人が辞任,解任,死亡などにより欠けたとしても後見が終了することはありません。この場合,新たな後見人の選任が必要となります。

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