保佐制度の対象となるのは,判断能力が著しく不十分であり,自分の財産を管理したり処分したりするのが困難で支援が必要とされる人です。
保佐人は家庭裁判所から選任されるため,法定代理人の一種のように思われがちです。法定代理人とは法律の規定により代理権が生じた者をいいますが,保佐人,補助人は法定代理人ではありません。他方,成年後見人や親権者は,法律の規定によって代理権を与えられた法定代理人であるため,本人の意思によらず,代理権を行使できます。
保佐人には,基本的には代理権がありません。あるのは同意権と取消権です。同意権と取消権の範囲は同じですので,民法13条1項1号から9号までの重要な財産行為に対して保佐人は同意権を有して,尚且つ取消権もあるということです。
保佐人には代理権は基本として無いのですが,代理権を付与することができます。保佐開始の申立権者や保佐人,保佐監督人の請求に基づいて,家庭裁判所の審判を経て,保佐人の同意権の範囲を広げたり,特定の法律行為について代理権を付与することも可能です。
保佐の申し立てをする時,預貯金の管理や不動産の管理などの代理権付与の申し立てがありますと,家庭裁判所は何を頼むか決定し,代理権を付与するのですが,それには本人の同意が必要とされています。
本人が同意しないと,保佐人に代理権を与えることができないのですが,これは保佐類型の人には成年被後見人と違い,まだ判断能力がある程度残っていますので,本人の自己決定の意思を尊重しているのです。
本人が代理権付与に対して同意しないのであれば,保佐人は同意権・取消権しか持っていないということになります。そうなると,悪質商法から守るとするなら,日常生活自立支援事業を活用し,預金通帳を社会福祉協議会に預けるなどして対策を取る必要もあります。しかし,社会福祉協議会との契約は本人が行わなければならないため,本人がしないと言えば利用できません。
補助類型の場合,本人の判断能力が不十分で重要な財産管理などをするのに援助が必要とされた人が当て嵌まります。
補助については,代理権だけでなく同意権・取消権も本人の同意が必要となりますので,本人が代理権も同意権にも賛成しなければこの制度を使えないということになります。
このように自己決定権の尊重がなされているのは,福祉制度の理念とも合致することで本人保護の理念ともパランスが取られているということです。