人が亡くなった後には,葬儀の手続きや納骨,電気・ガスや水道の停止,病院の入院費用の支払いや介護施設の支払い,アパートの賃貸借契約の終了など様々な事務処理が必要となってきます。こういった死後の事務処理を第三者に託す必要がありますが,これは生前の元気なうちに死後事務委任契約を締結しておくとスムーズに進みます。
死後事務委任契約は,委任者が死亡したとしても委任契約を継続することができます(最高裁平成4年9月22日)。
葬儀や法要に関する自分の希望を叶えるためには遺言書に記載しておいても,それは付言事項で法的拘束力はありません。そこで,自分の葬儀,埋葬などを希望通りにしてもらうようにするには,生前の元気なうちに死後事務委任契約書を作成して,委任者と受任者との間で契約をしておくのも一つの方法です。
なお,祭祀主催者を指定しておき,自分の死後の葬儀,埋葬といったものを頼んでいたとしても,本人の願いが実現されるという保証はありません。
そして,生前に,葬儀会社との間で,生前予約契約を締結し,葬儀や埋葬を任せるという方法があります。この場合,葬儀会社が契約内容をきちんと履行すればいいのですが,契約に違反するリスクというのもあります。これは,死後事務委任契約においても,自分が亡くなった後にきちんと受任者が契約を履行する保証はなく,契約を履行しないで資金を着服するということがあります。
そういったリスクを防ぐために,民事信託を活用して死後事務を履行してもらうという方法があります。例えば,親族に死後事務を任せるといった内容で受託者になってもらい,専門家を立てて信託監督人として,死後は監督してもらいながらサポートもしてもらうようにすれば,手続もスムーズに進むはずです。