成年後見は,本人が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合,その本人のために後見開始の審判によって行われます。
成年後見人が選任される場合,家庭裁判所の審判によって職権で選任されます。
成年後見人は,本人の財産に関する法律行為を代理したり,財産管理を行ったり,本人が行った法律行為を取り消したりできますが,できないこともあります。
どんなことができないかというと,日用品の購入についての同意,介護といった事実行為,医療行為の代諾,本人の一身専属権に関する行為です。
日用品の購入というのは,例えば,食料品やお酒,整容に関する品物の購入などであり,これらの購入について成年後見人は同意権がありません。成年後見制度は,自己決定の尊重から,本人が生活するために必要な食料品などの購入については,同意も必要としませんので,取り消すこともできません。
また,事実行為には介護など本人の食事や入浴介助,着替え,病院への送迎などがあり,これらは法律行為ではないため,成年後見人は行えません。
もし,本人に介護が必要であれば,本人に代理して介護事業所と介護サービスの契約をすることになります。他にも介護保険制度やその他のサービス業を通じて,依頼をすることになります。
そして,医療行為の代諾というのは,本人が手術や延命措置など医療行為を受けたりする際に,本人に代わって成年後見人は代諾することはできません。手術など受けたりするのは本人固有の権利であり,法律行為ではないからです。医療行為が必要となれば,親族がいれば親族に判断を委ねることになります。
一身専属権というのは本人だけが行使することができるもので,婚姻したり,養子縁組をしたりといったものです。こういった身分上の行為については本人の意思を尊重すべきとされているため,成年後見人の代理に親しまないのです。従って,成年被後見人であっても婚姻や養子縁組など単独で有効に行うことができるとされています。
以上のように,成年後見人は何でもできるというわけではなく,できないこともありますので注意が必要です。